「死神の精度」 伊坂幸太郎
「イタリアでうっかりプロ野球選手になっちゃいました」八木虎造・著

まずタイトルに笑ってしまいます。
そして、実際読みながら何度も声を出して笑ってしまいました。
八木虎造さんはフリーのカメラマン。
2004年29歳のとき、仕事に忙殺されこれじゃ体も自分もダメになっちゃうと、
適当に選んだシチリアのパレルモへ癒しの旅へ出る。
旅といってもしばらくのんびりする予定だったらしい。
ところが、言葉も通じない、友達もいない、娯楽はない。
すぐにホームシックになる。
何気なく見たテレビのアテネオリンピックに臨む日本チームの映像を見て、
かつて野球少年で、現役の草野球選手だった彼は、無性に野球がやりたくなり、
イタリアで野球をやろうと決心する。
そしたら意外や意外、こんなイタリアの田舎のシチリアに野球チームがあったとさ。
初日、みんなの練習にいきなり加わって、そのあと書類にサインをさせられた。
なんとそれは、イタリアのプロ野球セリエAの入団手続きだったのでした!
あったんです、イタリアにもプロ野球が!?
八木さんのプレイを見て、これはいけると判断した監督の独断(笑)
ここから八木さんのイタリア野球の爆笑体験談が始まる。
イタリアといえばサッカー大好きの国。
野球をする人は一握り。
ルール知らない人はあたりまえ。
道具を買うのだって大変だそうで。
でも、やっぱりいるんです、どこの国にも野球大好き人間が。
そうは言ってもイタリア野球。
フォアボール連発は当たり前。
20対19みたいな点数はしょっちゅうで、しかもいつもすごい点数の接戦試合。
乱闘はひっきりなし、抗議でくるくる変わる審判の判定。
サッカーのワールドシリーズが始まると練習に来る人4人とか。
とにかく、好きなのか、いい加減なのかわからないのがイタリア野球。
ちなみに八木さんのプロ選手の報酬は1試合20ユーロ!(当時2800円也〜)
なので選手はちゃんとした仕事を持ってる人ばかり(笑)
でも、なぜかみんな熱い!
ドラマROOKIESと変わらないものがある。
やっぱりどこでやっても野球ってドラマなんですね〜〜。
読みながら笑って泣いてのくりかえし。
八木さんのシチリア生活のエピソードも楽しい。
みんな人懐っこくて食べるの大好き、お酒大好き。
でも落ち込むと手がつけられない・・・
そして息子のように案じてくれるシチリアのマンマとの心あたたまるお話。
現地でカメラマンとしても活躍する。
出来すぎるお話みたいだけど、これは八木さんの人柄なんでしょうね〜〜。
とにかく野球が大好きの八木さん。
というかこんなに自分が野球が好きだったのかと知らされたシチリアでの生活だったみたいです。
そして、野球ってなんて楽しいんだ〜って!
言葉が通じなくても、キャッチボール始めただけでなんか笑顔になっちゃう。
なんかわかるな〜〜〜。
読んでて私が熱くなってしまいましたよー。
そしてとっても羨ましい。。。
今も八木さんは世界のどこかで野球をやってるはず。
『毎日かあさん』 西原理恵子

話題になってたのは知ってましたが、はじめてこのシリーズを読みました。
(おすすめ商品を参考に^^)
芸大出とは思えないすごいイラストなんですけど(笑)、その中身は最高でした!
1男1女の母であるサイバラさん(西原さん)の子育て奮戦記。
烏頭の小学生の息子と、幼くしてすでに女の生きる術を得てる保育園の娘。
その二人のエピソードが微笑ましいやら可笑しいやら!
とくに息子のバカっぷりには頭を抱えるほど(笑)
仕事を持ちながらも、毎日を楽しく母さんやってる肝っ玉母さんのサイバラさんに元気もらえます。
クスっと笑って、合間にちょこっと泣かせるところがニクイです。
働くお母さんの、いえ世のお母さんの応援歌みたいなマンガですね♪
アルコール依存症で別れた夫も登場しますが、彼を見つめる目が冷静だけど温かい・・・
そんな夫でカメラマンだった鴨志田さんは先月癌で亡くなったとか…
本を読んだタイミングでニュースを知ってビックリしました。
サイバラさんは麻雀のマンガも書かれてるそうで。
さっそく注文してしまいました〜〜(笑)楽しみ、楽しみ♪
*「ああ息子」も好評発売中
「無銭優雅」 山田詠美 著

42歳の男女の恋愛を飾り立てることなく素直に描いた小説。
山田詠美の語り口がそのまま文章になったような、ユーモアがあって軽快で率直な文章、でも巧みな表現とグッと来る言葉の数々にすっかりとりこになってしまいました。淡々としたお話なのに、ラスト数ページは自然に涙が溢れて自分でもびっくり。
主人公の女性は、どちらかというと世間知らずで大事に育てられた女性ではあるけれど、彼女の自分に偽らない生き方、恋愛に対する考え方にはとっても共感できた。
そして主人公の恋愛模様と合わせて、年老いた両親の男と女の心の機微の描きかたも絶妙!深いな〜〜〜。
42歳?45歳?世間的にはどこからみても立派な大人だけど、好きな人と一緒のときの時間は年齢には関係ない。むしろ、未来が輝いているように錯覚さえしてしまう若者の恋愛より、この年代の恋愛には深い情念がある。それは”生きること”を実感し、”生きることが永遠でないこと”を知ってるから。だからこそ、今を大事にしたい、愛する人との時間を大切にしたいという想いが強くなる。 そして、二人だけのとるに足らない遊戯、ジョークのやりとりの積み重ねが、ふたりの絆を強める。それが離れがたい時を築いていく。これは単に体を重ねること以上に特別な秘め事。このへんの描写がとっても楽しい。無邪気なふたりの可愛いこと。年なんか関係ないよねって(笑)こんな恋愛できるふたりはなんて幸せ者なんでしょう。
同世代の人には共感を、若い人には年をとることって悪くないねって思える小説では。
【追記】小説の中にニコラス・ケイジの名前が出てきたよ!^^)
「香水 ある人殺しの物語」 パトリック・ ジュースキント (著)

18世紀のパリ。
孤児のグルヌイユは生まれながらにして天才的な臭覚を持っていた。
しかし、なぜか彼自身には体臭はない。
やがて彼は香水調合師となりその才能は開花する。
彼の求める香はとどまることを知らず、究極の芳香を求め、
やがてその欲求はまだ蕾のような若い娘へと向かう。。。
恐怖の連続殺人鬼と落ちていく男の物語。
ぞっとするようなドラマティックな物語ではあるのですが、物語に出てくる匂いの数々。
それはパリの街の悪臭から美しい花の香まで。
おもわず想像力を駆り立てられます。
そして、人は匂いに支配されてるのではないかと思うほど。
そういえば、以前TVで”人は人の何に惹かれるのか?”というテーマの番組がありました。
それによると、人はフォロモンに惹かれるのだそうです。
そしてそのフェロモンとは、すなわち”匂い”なのです。
実験がありました。
若い男女10人づつが向かい合う。
まず女性に第一印象で好きなタイプを書きとめてもらう。
次に、男性が全員同じTシャツで縄跳びをして、女性がその汗をかいたTシャツを嗅ぎわけ、
好みの人を当てるというもの。
結果、半分以上の女性が第一印象と同じ男性を言い当ててました!
これをみて、人は匂いで惹かれるのかーーーー!と驚きました。
フェロモンって感じ取れないほどのものでも”香り”のことなんだー。
小説を読むと、なんか納得してしまいそうです。
この小説3年ほど前に読んだのですが、劇場でこの映画の予告編を観て、
映画化されたことを知りました。
タイトルは「パフューム ある人殺しの物語」(独)、2007年3月公開。
それで再び読んでみようと思ったわけで。
はたして、匂いがテーマのこの物語、映画ではどのように見せてくれるのでしょう。
「手紙」 東野圭吾著

主人公は”強盗殺人犯の弟”直貴。
兄の犯した罪によって、彼の人生の歯車は狂っていく。
進学、就職、バンド仲間、そして恋愛。彼の人生に兄の存在がことごとく邪魔をする。
加害者の家族の苦しさ、過酷さをまざまざと見せつけられました。
でも読みながら自分が直貴の心と重なってしまってることに驚いてしまいました。
彼がとても真面目な青年だからというのもあります。
彼が受ける理不尽な待遇や扱いに怒り、生活を切り詰め独学で進学しようとする彼を応援し、能天気に刑務所から月に一度手紙を送ってくる兄に腹を立ててしまってる自分がいました。彼は犯罪者でもないのに、こんなに頑張ってるのにと。
しかし、彼を密かに思う女性の存在や、就職先の社長の言葉に、直貴が感じたように自分もドキリとしてしまったのです。この直貴の心の変化に読者を誘い込むところがすごいぞ、東野圭吾!
加害者家族への社会の差別や偏見を指摘しながらも、加害者の罪は償っても償いきれないもの、それは加害者だけではなく家族も背負って生きなければならない宿命なんだということをこれでもかと突きつけてきます。読み進めながら何度もいろんなことにハッとさせられました。
これは今年読んだ小説の中でもかなり面白くて読み応えのある1冊です。
『冷血』 トルーマン・カポーティ著

内容(「BOOK」データベースより)
カンザス州の片田舎で起きた一家4人惨殺事件。被害者は皆ロープで縛られ、至近距離から散弾銃で射殺されていた。このあまりにも惨い犯行に、著者は5年余りの歳月を費やして綿密な取材を遂行。そして犯人2名が絞首刑に処せられるまでを見届けた。捜査の手法、犯罪者の心理、死刑制度の是非、そして取材者のモラル―。様々な物議をかもした、衝撃のノンフィクション・ノヴェル。
映画に先立って読みました。正直のところ後味よくなかったです。
とくにラスト近く、犯人たちの歪んだ社会観、人に対する偏見に、夕食前だったのですが食欲なくなり気分悪くなってしまいました。でも裏を返せば、ここまで読者に衝撃を与えるのは、この事件や犯人にどっぷり向き合ったカポーティの取材のなせる業なわけですよね。
1960年代に起きた事件ですが、犯人の幼い頃の家庭環境などによる精神分析、これはまさに現在頻発してる残忍で理不尽な殺人事件で取りざたされてる犯罪者の精神分析に当てはまり、まるで現在の事件を思わせるものがありました。
カポーティはこの本の執筆のあと、1冊も小説を書くことができなかったと言われてます。それはこの事件の一人の殺人者ペリーという男の中に自分を見たとも言われ興味深いところです。そのペリーという男は、温和な面と狂気を含んだ面を合わせもつとてもミステリアスな人物。この役を演じる俳優にも興味あります。
映画では、この小説を書くまでのカポーティと、そのことが彼の将来にどう大きく影響したかが語られているそう。とにもかくにもカポーティに姿形、雰囲気までそっくりに役作りしたフィリップ・シーモア・ホフマンの演技が楽しみです。
「ファースト・プライオリティ」 山本文緒
「あなたの最優先のもの、ゆずれないものは何ですか?」
この小説の主人公はすべて31歳の女性。
それぞれの主人公のこだわりが時に面白可笑しく、時に切なくほろ苦く短編に収められてます。車だったり、カラオケだったり、ボランティアだったり、ホストだったり(笑)そのこだわりかたはなかなかたいしたものだと思いました。こだわることって一つの生きがいですものね。
あるお話では声を出して笑ったり、また思わず涙が出てしまったり。とっても感性豊かな短編集でした。
ずいぶん前に、文緒さんの小説にはまって片っ端から読みました。
久しぶりに読みましたが、やっぱりいい!!
さくさくと読みやすい歯切れのいい文章、どこか覚めているんだけど心に響くものを感じます。
人の観察力が鋭いな〜と思います。いつも客観的。女性の本心、いいとこも嫌なとこもズバリとついてきます。ひょっとしたら自分でも気付いてないことを、文緒さんならズバリ指摘されそう。ちょっとコワイかな?でも、ご本人はほんわかしてとっても温かそうな女性。(いや、そう見えるだけなのかな/笑)
友だちとサイン会にも行ったことがあります。その後そのサインをいただいた「プラナリア」で直木賞受賞!!
文緒さんの、ファースト・プライオリティは「小説」のようだ。
この小説の最後の短編「小説」にご自身の31歳のころのことが書かれてました。
ちょうど離婚されたばかりだったみたいで。
小説の中で、ある男がいいます。
なぜ31歳の女性ばかり好きになるのかと聞かれて、
「30出たくらいの女っていいじゃないか。
そろそろ迷いが吹っ切れて、腹がくくれてて、でもやり直しもスタートもできる歳だろ」って。
妙に説得力あってうなってしまいました。
この小説は自分へのエールだったに違いない。
『ダ・ヴィンチ・コード』 ダン・ブラウン
映画を観てから読み始めました。
途中、歴史的なこと宗教的なところで躓くところはありましたが、よくできたお話だなぁ〜と、ただただ感心するばかり。フィクションとわかってても、キリストにまつわる数々の伝説、ひょっとしたら?と思わせる部分があってなかなか面白かったです。
その一つにディズニーのエピソード。女神崇拝を唱える思想が、ディズニー映画に使われるバラの花や女性主人公に現れてるというくだりには、ほほうーと唸ってしまいました。フィクションとわかってもすごい説得力。
さらに映画のあとに読んだので、情景やそれぞれの登場人物の顔が浮かんできて楽しめました。トム・ハンクス、オドレイ・トトゥは適役だと思います。フランス警察のファーシュは、ジャン・レノじゃないほうがよかったかなあ。もっと曲者っぽい役者さんだったらよかったと思います。
一番ドンピシャなのは、ティービング演じるイアン・マッケラン!!
頭が切れてちょっと狡猾な一筋縄ではいかない学者にピッタリでした。
あと、本を読んで思ったのは、オプスデイのアリンガローサ司教(アルフレッド・モリーナ)とシラス(ポール・ベタニー)のエピソードや心情が映画ではかなり説明不足だったこと。映画ではアリンガローサという人物が、どう物語に影響を与えているのかよくわかりませんでした(^^;)。本ではけっこう同情したり感動する場面があったので残念でなりません。あれこれ考えると、もっと長い映画になっもよかったのではないかな?まあ、3時間まで。
とにかく原作者の発想のすばらしさなのでしょうが、ルーブル美術館の館長ソニエールが残した謎の数々には圧倒されました。ちょっと謎解きに疲れるところもあったけど。謎の数式、詩篇に隠された秘密。科学と文学を織り交ぜた頭脳的なミステリーですね!!
今はもう一度映画を観て、いろいろ確かめたい気持ちです。
『流星ワゴン』 重松 清
過去に遡って子どもに向き合っても、未来である現実は変えられない。
でも自分が変ると、そこから子どもに対する見方も変るし、確かに何かが変るかもしれない。
いかに親の生き方が子どもに影響するか、この本を読んで改めて思いました。
小説は父親と息子のかかわりを切なく描いたもの。
主人公は38歳の男。リストラそして失業、妻とは冷え切ってて、中学受験で失敗した1人息子は家にこもり荒れている。
もう家には帰りたくない、このまま死んでも構わない・・・と思った男の前に一台のワゴン車が止まる。5年前の交通事故で即死した父親と小学生の男の子の親子だった。驚く男をふたりは車に乗せ、1年前のある場所に連れ出す。それは男にとって大切な”時”だと親子は言う。
(ちょっと「素晴らしき哉!人生」みたいですね)
過去の自分と向き合うことは、自分を客観的に眺めること。
そこには自分だけでなく、自分をとりまく家族、親をも、冷静に見つめることのできる自分がいた。
確かに冷静になれる。だって、その先に起こる未来がわかってるから。
誰にでもこんな経験ができたら面白いな〜と思った。ちょっとコワイけど。
愛する家族に幸せになってほしい!
それが生きる意味につながるんだな〜。
ワゴン車の親子(ステキな幽霊
)が、とてもいい人たちで、とくに小2の男の子の素直な言動には何度もはっとさせられた。男の子の声が小説から聞こえてくるようだった。
実際の親子はきっと分からないことが一杯なんだけど、小説で読むと親子って切ない。












